今年のクラフトのショーではある意味過去にない「事件」が起きました。
特定犬種(KCは15犬種をリストアップ)のBest of Breed 審査後に、そのBOB(その犬種の第一位=犬種代表犬)を獣医師がチェックして、そのチェックをパスしなかった場合BOBを剥奪=失格扱いとする、という新ルール です。
この新ルール、クラフトが第一歩目。その後のショーにおいても採用されることになっています。
KC曰く、犬種の健全性の向上とドッグショーというスポーツを守るため、だそうです。
ただし、獣医師のチェックを受ける犬種は全てではなく、KCがピックアップした以下の15犬種のみ。
バセットハウンド、ブラッドハウンド、ブルドッグ、チャイニーズクレスティッド、
チャウチャウ、クランバースパニエル、ドゴ・デ・ボルドー、フレンチブルドッグ、
ジャーマン・シェパード、マスティフ、ナポリタン・マスティフ、ペキニーズ、パグ、
シャーペイ、セントバーナード
チェック項目はこちらに詳細と共に列記されています。 目や皮膚のことなど細かく犬種ごとに項目が出ています。
今回KCがこのような措置に踏み切ったのは、数年前にBBCが放映した「Pedigree Dogs Exposed」の影響を受けてのことだと思われます。
PDEの後に、主にやり玉に上がった一部犬種のブリードスタンダードを改正したりして、外見上「極端すぎる」ものを排除していこうという方向になってきています。
特にBBC番組放映後に強まった世間の風当たりに対して更に「ほらね、ケネルクラブはこうして努力してるんですよ」ということをアピールしたかったのか?
真相はわかりませんが、facebook、twitter、犬関係業界や個人のブログなどを見ていると、KCに対して攻撃(?)をしているような愛護団体の名前なども今回の措置までに至った影響として出てきたりしています。
そして、クラフトが始まって早々にBOB犬が獣医チェック後に失格(DQ)するという事態が実際に起こりました。
クラフト開催中にDQとなってグループ選に出場不能となったのは6犬種。ペキニーズ、ブルドッグ、クランバー・スパニエル、マスティフ、ナポリタン・マスティフ、バセットハウンドです。
予想通り(?)大騒ぎになっています。ペキもブルも、そしてクランバーも実績のあるトップクラスの犬です。
今回の失格事件(?)については、立場が違うと見方が違うかもしれません。ですので、以下はあくまでも「私個人」が現時点で感じていることです。
今回の措置にはそもそも、最初からその「やり方」に大きな問題があると思います。
獣医師のチェックがイケナイというのではありません。あくまでも「やり方」です。
一番大きくて罪深い問題は、best of breed選出「後」に獣医師のチェックが入ること。
これはある種、意味がないと思うのです。
犬種の「健全性」を言うのであれば、ブリードリングに審査に入る「前に」リングサイド、あるいは別の場所で獣医師がチェックするのが妥当ではないのか。
BOBになってその後失格となった犬よりも、もっと不健全な犬がエントリーしていた可能性だってあるかもしれないですしね。
不健全な犬はだめよ、と言っているのだから最初から不健全かどうかを判断して、ブリード審査前にアウトとなったらその時点でリングに入れずエントリーフィーは半額くらいでも返金する、というのが一番納得できるのではないかな。(みんな遠くから、しかもクランバーのように外国からエントリーするのですから)
そして何よりも、BOBという名誉ある賞をジャッジが自信を持って「渡した後」でガケから突き落とすようなこのやり方には、私はちょっと納得できません。
このようなやり方は、ブリードを審査したジャッジの面目も完全に潰してしまうというもう1つの問題もあると思います。(オーバールール)
ドッグショーは、いわゆる「見た目」だけの審査と思われがちですが、ジャッジは触診をして、そして目でしっかり外観も見て、犬を動かして全身の状態も見て、更にリング内での態度、触診時の犬の態度も判断してその犬のトータルな「健全性」も審査しているのです。
だから、唸ったり噛みついたりした犬はDQだし、その犬種にそぐわない気質と判断されたら、それだけでも良い成績はもらえません。明らかに健康上不具合があるとジャッジが判断すれば、例えその犬がどんなに美しくても、その犬も上位に行くことはできないのです。
目の問題=リストにもあるような、眼瞼内反や骨格の狂い、あるいは形成不全などから来る動きの不健全さというものは、ジャッジにだってわかります。
確かにジャッジは獣医師ではありません。(獣医師でジャッジという方も少なからずいますが)しかし、犬世界のプロとして少なくとも一般の我々よりも犬の健全性を見極める目を持っている人は多いと思います。ましてや、クラフトといった世界でも名だたる伝統のある大きなショーで審査をまかせられるほどのジャッジが、こういった事すらわからないとは考えにくいのです。
ショーにおいて、ジャッジの判断はある意味絶対であり、その権限をケネルクラブは与えているはずなのに、そのジャッジが自信を持って「この犬がこの犬種のナンバーワン」と決定した犬を、その後に獣医師が失格にしてしまう。 これはどう理解したらいいのでしょう?
些細な問題さえわからないボンクラジャッジが審査に立った、ということなんでしょうか?(苦笑)
ジャッジが自信をもって選出した犬を、その後ひとりの獣医師がDQにしてしまうということは、ショーそのものの意義もある意味潰してしまうことになりかねません。なので、余計にこうしたチェックは「審査以前」になされるべきだと思うのです。
もう1つは、なぜこの15犬種のみなのか、そして「健全性」とはどこまでを追求するべきなのか。
リストでもわかるとおり、ここで健全かどうかの判断ポイントは、あくまでも外側から見える範囲だけで、ある意味極一部のものです。
もしも、BOBになってグループファーストまで取った犬の目や皮膚や呼吸器関係が審査後の獣医チャックでOKであっても、実は心臓がばりばりに悪いとか、遺伝的な内分泌疾患、例えば甲状腺炎なんてのを患っていて投薬中とかでもいいのか? ということです、極端に言えば。(汗)
実際、外見上はとても健全でも犬種的な問題として重大な心疾患がある犬種といったものが複数いるのですから。
どのような犬種でも多かれ少なかれ遺伝的に問題は抱えているのですから、あくまでもそれにこだわるのであればショーエントリーの前に、犬種ごとに検査項目を出してショーにエントリーする時に各項目の健康証明書を提出させたら? なんて思ってしまうんですけれどね。。。
獣医師チェックがBOB後では問題がある、と書きましたが、では、その犬がDQとなった場合に備えて、なぜリザーブ(次席犬)を決めてそれを繰り上げさせないのか?
BOB決定後にその「犬種代表犬」をDQにして、別の犬を替わりに犬種代表としない=ショーや犬種の事情をよく知らない人にとっては、代表犬がいない犬種すべてが不健全だったと誤解されかねないのではないか? 一旦BOBとなったものと比較して多少見劣りする部分があるかもしれないけれど、でも、その犬種代表として十分資質を持った健全で素晴らしい犬が他にもいたと思うのです。なぜ、そういう犬を繰り上げてはだめなんでしょうか。。
今回DQとなってしまったクランバーは、デンマークからの遠征犬でした。13カ国のタイトルを持つトップクラスの犬です。
過去、この犬を評価した世界中のジャッジは健全性を判断できないヘボジャッジばかりだったのか? という意見も当然ありました。
獣医チェックの結果やその内容に関しては、オーナーと獣医師との間での極秘内容でKCは一切公表しないとしています。
しかし、クランバーのオーナーは検査結果とそのいきさつを全て今回暴露しました。
過去の健康チェック(眼科専門医による目のチェックも含む)全てでクリアなのに、今回のDQはとても納得できるものではない。他の人たちにもクラフトに参加しないよう呼びかけると、怒りを押さえつつもインタビューに答えています。
VIDEO
facebook では、来年のクラフトをボイコットとしましょう、なんて動きをする人たちも出てきました。
このビデオのコメントに「クラフトをトイレに流す時がきたね」と書いている人もいて。。(苦笑)
今後、この問題は長く議論されそうですね。
私としては、KCにもう一度、どうせやるなら皆が納得できるような形でルールを作り直してほしいと思います。
獣医師のチェックを入れるなら、たった1人の判断ではなく1つの犬種に対して獣医師を複数用意して総合判断とする、という方法の方が良いようにも思います。
今回のことに関しては、獣医師側(クラフトでBOB犬を診断した獣医師ではありません)からも問題がある、という意見が出てきています。
KCには、もう少しそのやり方なども含めて方法と対策をしてほしいものです。KC側としては準備をしてきて臨んだと思うのですが、問題として取り上げた犬種のクラブと慎重に話し合うなど、もっと準備などが必要だったのではないかと思います。
私は、あまりショーのことやブリーディングに関しては積極的にここで意見を書くことはありません。
というのも、例のBBCの番組を見てもそうなのですが、世間にはとにかくショーにしろ繁殖のことにしろ「悪い面」ばかりをことさら取り上げて強調して、そればかりをつつき回して正論という名の言葉の暴力をふるう人たちや団体が多いからです。中には本当に暴力的行動を起こす恐い人々もいたりしますが。(汗)
ショーや繁殖の実際や現場に何一つ問題がないとは言いません。実際、問題はたくさんあります。しかし、より良くするために熱意や誠意をもって地道に努力している人たちも世の中にはいるのです。なんでもかんでもブリーダーが悪い的な人たちやアグレッシブな人たちは、こうしたことにすら難癖をつけたがることもありますよね。。。
ブリーダー=悪 ショー=虚栄 こうした短絡的単細胞的視野と思考のみで全くその本質に触れる、というよりも近づこうとすらしない、あるいは理解のリの字もない人たちには何をどう言っても説明しても不毛な議論になるばかりで時間の無駄、ということはいくつか経験していますから。(苦笑)
私がこんな事を言うのもナンですが(汗)今回のクラフトで6犬種代表が失格扱いになったということは、おそらく日本でもネットなどで多いに話題になると思います。
どうぞ、ある種時に過激な(?)純粋犬種反対論者などが過剰に「ほらみろ、やはりショーに出るような犬は、、、」といったことを仮に勝ち誇ったように言い出したとしても広い視野で見て考えてほしいと思います。
健全な犬を造り出すことは重要です。それは変わりません。しかし、今回のクラフトでの「やり方」などには問題が見えるし、仮にBOB犬を排除したとしても、そもそも犬種の「健全性」とは何か、と考えた場合に奥が深い問題なので簡単に答えが出るものでもないからです。
長くなりましたが今年のクラフトBISは、ラサアプソでした。リザーブがニューファウンドランド。
物すごくきれいなニューファウンドランドで、私個人の好みとしてはこちらにBISあげたかったかな。
そう、そしてニューファウンドランドは犬種的な問題として重大な心疾患を抱えていて、比較的短命だったりするんですよね。。。。そのうちにショー会場にエコー持ってきてBOB後に獣医師チェックですかねー?(イヤミ)まさか!(爆)
今年はYouTubeでライブストリーミングされていたましたが、犬種の審査に関しては、ライブで提供されたのはグループ選以上でした。
アジリティ、フライボール、フリースタイルと見ていて面白かったのですが、やはりあそこまでのレベルとなると「イッちゃっる系」の子達も出てきてましたねー。(苦笑)
見逃した方は、Crufts で検索するとたくさんでてきます。
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